次の日、サイラスは寝ているティキーの様子を確かめると、彼を起こさずに仕事に出た。彼は良い顔で眠っていた。もう熱も下がったようだ。このまま少し休めば明日は大丈夫かもしれない。任務とティキーの気持ちの狭間で、サイラスも苦しかった。着実にという思いは強かったが、ティキーがああまで言い切る不安というのも気になる。迷ったあげく、サイラスはティキーの気持ちを汲むことにしたのだ。今日は遅くても五時頃には帰れる。話はそれからだ。
ただ、ティキーの体調の事は報告しておかなければならない。早朝に悪いと思ったが、サイラスはベルのひもを引いた。意外にもドアはすぐに開き、片手に本を持ったブギーが顔を覗かせた。 「どうした?」
ひげまでそってある所を見ると、彼はかなり早起きらしい。サイラスは昨日のティキーの様子を彼に伝え、ナナカに伝言を頼んだ。
ティキーは昼近くまで寝ていて慌てて飛び起きて来たが、見ると、テーブルの上にサイラスからの伝言。
『僕が帰るまで家で待ってて』
帰るまで、ってことは、今日は家に、ってことだよね…
ティキーは涙ぐんだ。サイラスは解ってくれたんだ。しっかりと食事をとり少しばかり体操までして、ティキーは全身の力を抜いてソファーにもたれた。
“リゲル、待っててね。明日はきっと…”
緊張続きだった気持ちの方も、すうっとほぐれていくようだった。
帰って来たサイラスは出迎えたティキーを見てほっとした。どうやら休めたらしい。顔色も良いし、表情も柔らかい。これなら何とかなるかもしれない。彼はティキーに明日実行する意志があることを確かめると、 「前の日は余計な事を考えずにリラックスしていた方がいい」 というブギーの助言を伝え、計画を一通りさらって早めに休むことにした。
計画通り実行との連絡を入れた時間が中央庁の夕食時だったため、挨拶は明日、ロルカナを送り出す時にとナナカが言っていたらしい。噂のロルカナとの対面も楽しみだったが、サイラスはナナカの激励を受けて任務に出るのだから頑張らなければと思った。
当日の朝が来た。ティキーは昨夜緊張で眠れなかったような気がしたが、朝すっきり目覚めたということはきちんと眠れていたようだ。かえってサイラスの方が眠たげな目で起きて来て濃いコーヒーを飲んでいた。彼らは早めに身支度を済ませると、再斉に至るまでの手順を確認しナナカに連絡を入れた。午後には予定通りロルカナが応援に来てくれるらしい。ただ、彼女が暇を持て余して余計な所をうろつくといけないので、打ち合わせの時間よりも三十分遅い時間に彼女を送り出すとのことだった。彼らはほっとして彼女の来る午後を待った。
午後早々、まだサイラスとティキーが昼食を食べている間にナナカから連絡が入った。ティキーがPモールを取ると、彼女は言いにくそうに告げた。
「あのね、ティキー。申し訳ないのだけれど、ロルカナがそちらに行く時間を、もう三十分くらい遅らせてほしいの。確かまだ、かなり余裕があったはずよね」
「え? う…ん、まあ、大丈夫だと思うけど。どうかしたの?」
「それがね、あの子結局待てなくて、すぐ帰って来るからってテラッタに出てしまったのよ。私、止めたのだけれど間に合わなくて。ロルカナも確かにすぐ帰って来ようとしたらしいのよ。でも、帰ろうとしたらドアのある壁の前に大きな荷物が置かれていたらしくて、今まで待っていたのだけれど まだどかされずにドアが開けられないって、今連絡が入ったの。もし間に合わなければ他の誰かに行ってもらえるように手配するから、とりあえずはもう三十分延ばしてもらうということで、いいかしら」
「解った。じゃ、とにかく待ってるよ」









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